- 工事場所 富士市北松野
- 性能向上リフォーム (耐震、断熱、劣化向上)
- ご家族数 5人 築年数20年在来工法木造2階建
- 家の大きさ 1階207㎡ 62.7坪 2階54㎡ 16.4坪 計223.4㎡ 67.7坪
- 工事費 140万円(税込み)
現場の現状とお施主様のご要望
「約20帖のリビングダイニングが夏はとても熱くなるので、涼しくしたい。」
現場の現状は
まず分かったことは、20帖のリビングダイニング全体が吹抜けになっていることでした。
新築した時は、吹抜け部分にオープン階段があり暑くなった空気はこのオープン階段から2階の廊下に抜けていき今ほど暑さは感じなかったそうです。
でもその後、息子さんが結婚され新居を2階にしたとき、完全二世帯に改築した時にこのオープン階段を塞いだそうです。
それからは、吹抜けに溜まった屋根にてらされて暑くなった空気が抜けるところがなく吹抜け上部に溜まりやすくなりそれが下のリビング・ダイニングに徐々に下がってきて部屋全体が暑くなったそうです。
エアコンが付いていますが、20帖吹抜けという部屋には効きが悪く、あまり役にたってないそうです。
現状を赤外線カメラで温度分布確認しました。
肉眼ではわからないですが40℃前後の温度分布を見てみると天井の一部は、屋根からまともに暑い熱が入ってきて高い所は40℃以上にもなっています。
これではこの熱が上からジワジワ下がってきて最後には人が立つ場所も暑くなるはずです。
ちなみに屋根の暑さは
赤外線カメラで見ると屋根の上は60℃以上になっています。
これでは現状の断熱性能が悪ければ熱がまともに入りますね。
この現状を変えるためにどのような工事をするか?
1.まずは吹抜けの上部の暑い熱の排出
トップライト(開閉式の窓)の設置
2.断熱材の強化
現状の断熱性能が低いか?劣化して性能が下がっている事が考えられる為断熱材を強化する。(種類の検討)
ご予算もあまり掛けたくないということなのでこの二つの内容で工事計画しました。
トップライトとは屋根に付ける窓です。
ただ注意事項としては当然ですが開閉式であることトップライトには明り取りだけのFIXタイプも
ありますがそれだと暑い空気の搬出にはなりません。
そしてこれも当然ですが、手がとどかない吹抜けの上部に付けるので電動式で開閉出来る事です。
後、屋根の上なので締め忘れて留守時に急に雨が降ってしまうと部屋が濡れてしまうので雨に反応して自動的に閉まるタイプを考えました。
その為採用したトップライトは「ベルックスVS電動タイプ」です。
このトップライトは先程書いた必要機能に電動式のブラインドも装備しています。
そして、吹抜けに溜まった暑い空気を搬出するだけでなく、吹抜けが広く大きいため溜まった熱い空気を撹拌して、室温を均等にするためにシーリングファンも設置するようにしました。
FWF504 + FWF643 オーデリック製シーリングファン
部屋の温度差を少なくすると体感は快適に感じますし、夏などは扇風機代わりになりエアコン無しでも過ごせると思います。
そして冬は反対に吹抜け上部に溜まった暖かい空気を下げることが出来ます。
そして今回天井に新たに充填する断熱材は、ウールブレス185mmという羊毛の断熱材です。
ひつじの羊毛で厚さは185mm。
当社は「セルロースバイバー」を新築時に使いますが、リフォームの場合やはり生活場所になるので、なるべく早くお施主様を普段の生活に戻すために工期がかからないウールにしました。
性能はセルロースとあまり変わらない羊毛にしました。
最初の工程は仮設工事、高い吹抜け部分を天井部分まで足場をかけて作業が出来るようにします。
そして工事中のホコリ対策ようにビニール養生しました。
屋根に穴をあけます。
既存のスレート屋根を剥がしその後電動ノコギリで屋根に穴を開けます。
万が一急な雨が降ってきたら家の中まで濡れてしまうのでドキドキですね。
穴を開けたらトップライト(天窓)を取付けます。
今回は吹抜けが広いので換気と採光を考え2ヶ所付けました。
注意事項は当前ですが、つけた後、雨漏りをおこさないようにしっかり防水工事をします。
大工さんが天井に下地を組んで断熱材を充填します。
断熱材は前回も紹介しましたが、ウールブレス185mmという羊毛の断熱材です。
ぎゅうぎゅうに断熱材を積み込みますが詰め込んだ後、膨らんで隙間なくなります。
と同時に電気屋さんが既存の電気配線とシーリングファンの配線をします。
下地に仕上げの壁紙(ビニールクロス)を貼って完成です。
今回の工事で気になったことがあります。
それは既存の天井に入っていた断熱材の50mmのグラスウール。
この家を建てた当時は一般的でしたが当社は使っていませんが、今でもこの断熱材を使っている会社があると聞きます。
今の家の断熱性能を考えた場合、かなり性能が低いといえます。
それに、かなり劣化していておそらく断熱機能をしていなかったと思います。
この断熱工事の実際の効果はどうかというと、断熱材を入れたところと入れないところの温度差を例に書こうかと思います。
まず、今回この工事でどのあたりに断熱材を入れたかというと吹抜けの天井部分です。
今回断熱材を入れてない場所を斜線で書いてみました。
斜線部分が断熱工事をしていなく、外壁面の部分です。
後の白い天井部分は断熱材を入れた部分です。
その部分を実際の写真と赤外線カメラでとった写真と比較してみます。
(赤色が濃い部分は温度が高く、黄色からブルーに変わっていくに従い温度は下がっていきます。)
同じ部分の写真ですが赤丸の部分は断熱材を新たに入れた場所なので
赤外線カメラのポイント温度は31.4℃ですが、新たに断熱材を入れていない部分は34.5℃になっています。
この場所も断熱材を新たに入れた場所な32.2℃、入れていない場所は36.2℃です。
断熱入29.4℃ 入れていない部分34℃
断熱入29℃ 入れていない部分34.6℃
断熱材を新たに入れた場所と入れない場所では4℃から5℃温度の差があることがわかります。
この結果より断熱改修工事はお部屋の温度環境がかなり改善されたことがわかります。
そして、これは改修工事ですが、同じ断熱性能がある断熱材を新築工事時に充填すればもっと効果的に快適な室内温度環境になると思います。