こんにちはアスカ工務店遠藤です。
11月22日に長野県で震度6弱の大きな地震がありました。
新聞やテレビで大々的に報道されたので関心を持った方も多いと思います。
自分も仕事柄、地震というといつか来る東海大地震、南海東南海地震、を連想し家の耐震や制震、耐震補強などが思いつきます。
そして、ある新聞報道に大変衝撃を受けました。
それは11月24日の月曜日の産経新聞。
この日は連休最終日でもあり、世の中は連休ムード連休最後の日だから家でのんびりという方も多かったと思います。
自分も予定がなかったので、事務所で事務仕事でもしようかな?
と思っていました。
でも新聞の見出しを見て驚きました。
何を驚いたかというと新聞に震度6弱と書いてありましたが、自分は地震の専門家ではないのですが、震度6弱の被害としては酷過ぎるという印象を受けたからです。
倒れた家が多く、特に白馬村堀の内地区ではこの地区の家が軒並み倒れています。
(被害のわりに死亡した方がいなかったのは幸いでしたが)
以前、富士宮市で東北3.11の震災後、震度6強の直下型の地震がありましたがその時は、それほどまで被害がなかったような気がします。
3.15富士宮地震
発生時刻2011年3月15日 22時31分頃
震源地静岡県東部
最大震度震度6強
当社が建てたの家でも富士宮市万野原新田のほぼ地震直下のオーナ宅がありましたが、家の中は壁にクラック等入りましたが外装はほとんど被害はありませんでした。
内装のクラック
そして、一般の家からの修理依頼もありましたが、一番酷くても瓦屋根が崩れたぐらいで、家が倒壊するといった事は聞きませんでした。
一般の家の地震被害
あまり地震規模が変わらないのに、なんでこんなに被害が違うのだろうと思うと自分の実際、現地を見たほうがいいなという気持ちになり11月24日、長野県の白馬村堀の内地区に車で向かいました。
11月24日の産経新聞の長野北部地震の記事を読んで衝撃と共に驚きを感じて、実際の現場を見たくなり現地に向かいました。
ナビの現地までの所要時間は約5時間。
今、朝の9時なので単純に到着は午後2時ごろになります。
この時間であればまだ明るいので2時間ぐらいは現地を見て歩くことができると思いました。
長野へは30代の頃、よくスキーに行きましたが、せいぜい塩尻止まりだったので白馬村へ車で行くのは初めてです。
ただ、まだ雪は降っていないので、よほどのことがない限り問題なく現地に着けるはずです。
まだ、何となく旅行気分で向かいました。
途中の精進湖道路
紅葉の盛りは過ぎていたのですが、まだ十分楽しめました。
諏訪湖SA
安曇野インターより高速を降りて大町方面に向かう。
まだまだ旅行気分。
少し驚いたことは長野県はガソリン代が高い。
静岡県ではリッター140円台もあるのに長野のガソリンスタンドはリッター160円台が多い。
「満タンにしてくれば良かった」と今頃後悔してもしょうがないですね。
後、車が国道なのに少ない。
たまたま休日なので少ないのか?
地方の過疎化なのか?
国道沿いの「りんご屋」という蕎麦屋で昼食をとる。
なぜ、りんご屋というのかは、隣にりんご屋さんがあったからだと思う。
家族でりんご屋と蕎麦屋を経営しているのか。
信州の蕎麦が食べたくて入ったのに、なぜか?メニューにラーメンが入っていたので、少しガッカリ。
ラーメンと蕎麦が同じスープだったらやだなと思っていたが意外とおいしかった。
田舎だと蕎麦だけでは大変なのかな?と勝手な思いを巡らせながら隣のりんご屋さんに会社の子たちにと買ったが、おいしいとかなり好評でした。
いよいよ、白馬村に入る。
街並みや景色が平穏でほんとに大地震が起ったのか疑いたくなるほどでした。
白馬村堀の内地区という新聞の地区名を頼りに向かおうとしますが、この地区に入る道という道が全て通行止め。バリケードとガードマンや警察官が入り口をふさいでいました。
やはり危険で一般の人は入れないのかなと思い。迷いましたがせっかくここまで来たし、何とか現場を見たいと思い、車をどこかに止めて徒歩で入ろうとしました。
幸い、堀の内地区のはずれに、おそらくですが、冬季の雪の集積所のような広場がありこの場所に車を止めました。(駐車違反で切符を切られることをビクビクしながら)
徒歩で歩いて思いと景色は一変しました。
家の境のブロック塀は倒れ、道には深い地割れが、本当に大地震は起こったことが分かりました。
いよいよ白馬村堀の内地区に歩いて入りました。
一番近かった倒壊した家です。
いくら自分が興味があるからと言って地震で倒壊した家を許可なく見たり写真を撮ったりするのは、被害を受けた家主さんにあまりにも失礼だと思いまずは家主さんを探しました。
たまたまご主人と思しき人に声をかけると役所の方と思われる人と一緒で話を聞くことができました。
地震の様子は感じてから家の倒壊までただ一瞬だったという事。
あえて言葉にすれば「グラ ガシャン」といいう感じだったらしく、地震がグラッときた瞬間には家は倒れていたとおっしゃっていました。
この言葉に今回の地震の特徴があるかと思われます。
この地震はネット情報ですが糸魚川-静岡構造線断層帯の北側に位置する神城断層が震源地でこの断層が「逆断層型」というメカニズムで起ったらしいです。
逆断層型地震とは、両側からかかる圧力によって断層にひずみがたまり、断層の片側が隆起することによって発生するらしく、テレビの中継で見ましたが地面が巨大な力で押されて盛り上がっていました。
(シロウト考えで豆腐を両手でちじめるように押す感じか?)
そして運悪くその盛り上がりの上や、反対に歪んで下がった土地の上に建っていた家が大きな被害にあったようでした。
家が倒れるまで一瞬だったという事は何となくわかるような気がします。そういえば道路にもひび割れがたくさんありました。
家主さんに写真を撮ることと、敷地内を見せていただく事の許可をいただき家の写真を撮らしていただきました。
お礼に会社から持ってきたトイレットペーパーを渡しましたがなんの慰めにもならなかったと思います。
今回は倒壊した家をよく観察してみようと思います。
倒壊した家の共通点は1階がグッシャとつぶれている事。
よくこの壊れ方で死者が出なかったなと思います。(不幸中の幸いですが)
何件か見させていただいた家の大半が1階の部分が完全に押しつぶされています。
家が押しつぶされる原因はいくつかあると思います。
一つは地震時に柱と桁、土台と柱の結束が弱く外れた事、今の新耐震基準ではこの部分は金物補強されています。
今回倒壊した家を見るとこの絶対外れてはいけない場所がことごとく外れています。
柱と桁の部分が外れています。
土台と柱が外れています。
この家に至っては柱から上がもぎ取られた様になっています。
原因はいろいろ考えられますが一番は補強用の金物がないか?機能しなかったかです。
新耐震基準ではこの部分は金物でガッチリ補強しますが、どうもそれが見当たらなかった?
新耐震基準の柱と土台との補強
新耐震基準では地震時特に力のかかる柱にはホールダウンというボルトを柱と土台だけでなく基礎から結束します。
その他の柱も補強金物で全て補強します。
柱と梁も補強金物で補強します。
でもその他の原因で補強金物が機能しない場合があります。
それは木材の腐りです。
シロアリや結露が原因で土台や柱が腐ってしまい、補強金物を止めているビスや釘がきかなかったことが考えられます。
これは当社でリフォームした家のシロアリ被害の写真ですが結露によっても柱や土台が腐ってしまう場合があります。
こうなってしまったらとても地震に対して耐えられない。
次回は地震で家が押しつぶされる原因2から始めます。
地震で家が押しつぶされる原因2から始めます。
昨日は柱と土台、柱と桁の結束が外れてしまって倒壊した理由を補強金物の例を出しながらお話しました。
まずは倒壊した家の現地の写真より。
この写真をよく見ると柱がポッキリ折れてしまっていることが分かります。
(写真が小さくて分かりづらいかな?)
という事は柱にかなりの力がかかってしまったという事。
木造建築、特に在来木造建築工法というのは地震、台風などによる風など外力はもちろん、家本来の荷重や家の家具などの荷重は柱、桁、土台、基礎などが力を分担し合って家を支えています。
柱も一本の力というよりは何十本という柱が支えるのですが、特に外力に対して大事な材料は「筋違」という材料です。
筋違とは
筋違とはご存じだとは思いますが、斜めに梁と土台をつなげて地震の力に対抗します。
この筋違を入れることによって、桁と柱、土台などを一体化させ地震などの力を家全体に分散させて、力の集中を防ぎます。
今回、柱が何本も折れてしまったという事はもしかしたら(本数を数えてたわけではないので)筋違が足りなかったかもしれません。
こうした場合、地震の力が弱い所に集中して柱などを何本も折ってしまったかもしれません。
他に倒れた家を見ても腰砕けのように倒れているのは1階部分の筋違が少なかったかもしれません。
新耐震基準の今の家は筋違はもちろん入れますが、構造用の外壁下地材を使って点ではなく面として地震などの外力に抵抗します。
構造用外壁下地材
地震が起った時に家に求められる安全性は壊れないにこしたことはないですが、まずは家が倒壊しないことが必須条件だと思います。
最低でも、中の人が無事でいられるという事です。
今回の家を見させていただいてそんなことを強く感じました。
今まで地震で倒れた家を見てきましたが、今日は地震がおきた長野県北部堀の内地区の周辺の様子を見てみたいと思います。
家の倒壊と一緒に驚いたのがおそらくりんごの木だと思いますが木の枝が折れていたことです。
木の枝はしなるから地震で揺れたぐらいでは折れないと思いますが、かなり太い所で折れていました。 地震の揺れの大きさを想像できます。
この報告の2回でも書きましたが、道路などのひび割れや陥没がありました。
被災地の中の道路です。
かなり、アスファルトが細かく割れています。
これはアスファルトが割れたというより動いて歩道の見切りから離れてしまいました。
下水管が隆起したのか?歩道が陥没したのか?
側溝があちこちで壊れていました。
見学させていただいた家の中には庭の池の水が無くなっていたところもありました。
(池の底がひび割れて水が抜けたか?)
でもこんなに家の倒壊が多い場所でほとんど損傷もなくたっている家もありました。
この写真をよく見ると、家の玄関前の石張りのアプローチ部分は大きく陥没していますしブロック塀が倒れています。
そして工事屋さんらしい電話かけている人の前の道路部分はかなり陥没しています。
おそらく、この家も地震時には相当揺れたと思いますが、ほとんど損害はなさそうです。
そして今まで見てきた倒壊した家との明らかな違いは比較的新しく、最近建てられたと思われるとこです。
要するに新耐震基準の家です。
他の家と比べてほんとは倒壊しなかった理由は調べる必要があるとは思いますが、現場で見る限りでは最近の新耐震基準の家は震度6弱では倒壊しなかったといえると思います。
次回は今回の長野県北部地震の堀の内地区の地震の様子を自分なりにまとめてみようかと思います。
今回で現地レポートは終了したいと思います。
長野北部地震の災害を新聞報道で知り、自分なりに疑問に思う事もあり長野県の白馬村堀の内地区に行ってみようと11月24日に現地に行きました。
現地での印象は地震の規模は震度6弱でしたが、堀の内地区は倒壊の家がほんとに多かったです。
確かに震度6弱は大地震だとは思いますが、私が以前経験した、東北の3.11震災の後に発生した3.15富士宮地震 震度6強 も同じ直下型だと思いますが家が倒壊したという話は聞いていません。
倒壊状況の遠景
倒壊の原因は現地を見た印象としては建物を支えている柱や梁をつなげている補強金物が不足していたか?古い建物で腐れによって補強する機能を失っていたかが考えらえます。
ただ気になるのは、そんなに古く感じない家も倒れているケースもあるので木造住宅の構造には欠かせない筋違が少なかった可能性もあります。
後、現地の方の話ではこのあたりは地盤も悪いと言っていました。
ただ、どんな条件だろうと、地震時の家の役割は家が倒壊しないことです。
最低でも、住宅内に人が生存できる空間、動ける空間の確保が必要になります。
その為には急激な耐力低下を抑えて建物に粘りを持たせることと、衝撃で柱が折れないこと、接合部が外れないことが重要となります。
今回の長野県北部地震の現地の視察をさせていただいて、建築の仕事をしている者として考えさせられることがたくさんありました。
家にはいろいろな役割があります。
家族にとっての生活のしやすさや、健康的である事、憩いの場などただ一番大事なのは安全面だと思います。
まず、そのあたりを基軸にして、そこから健康面、機能面、デザイン面を提案していく、家づくりをしたいと考えました。
そして最後になりましたが、11月24日の現地視察当日、心痛の中倒壊した家を見学させてくださいという、災害時の私の空気の読めない厚かましいお願いにも関わらづ、気持ちよく了解してくれたり、反対に地震の様子を説明していただいた家主の皆さんには心から感謝したいと思うと同時に現地の早期復興がされることをお祈りしたいと思います。
帰りの諏訪湖サービスエリア