よく制振装置の話をすると、お客様から
「家の耐震等級が3なら制振装置は必要ないんじゃない?」
というご質問をいただくことがあります。
確かに耐震等級を3に上げれば家は固くなり確実に強くなってくれます。
ただ、制振装置は「耐震等級を3にした地震に強い家」を別の働きで守ります。
お客様には
「耐震等級3と制振装置はお互いに役割分担をして家を守ってくれるのです」
とお答えします。
どういう事かというと、まず、制振装置の働きには大きく分けて3つあります。
その内容を詳しくご説明いたします。
1.家の揺れの吸収
家の耐震性能を上げる為には、耐力壁と呼ばれる壁の強度や数を増やします。
そして筋交を付けたり柱や梁などを釘、ビス、ボルトで強く締め補強します。そうすると家はどうなるか?
そうです、ガチガチに強くなります。
耐震等級を上げる(耐震等級3)という事は家をガチガチに強くすることです。
これだけ強くしておけばたいがいの地震に耐えてくれるので安心出来ます。
しかし心配なのは、地震の力は家が強くなれば強くなる程、その強く補強された場所に集中するのです。
繰り返しの揺れで、補強された場所が損傷を受けてしまうかもしれません。
それをカバーするのが制振装置です。
各補強箇所の揺れを吸収し、補強箇所に集中する地震力を緩和します。
2.共振の防止
地震には揺れかたの周期があります。「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことです。
東日本大震災のように大陸型で大きな地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じます。
テレビなどで地震により高層ビルがゆっくり揺れる様子を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。
反対に阪神淡路大震災のような直下型地震ですと「周期」は短くなります。
そして家にも「固有周期」といって揺れやすい周期があります。
この「固有周期」が、発生した地震の周期とたまたま似た揺れだと、建物の固有周期と一致してしまい、
共振して建物が大きく揺れ、家に損傷を与える場合があります。
これを共振と言い、この共振を緩和してくれるのが制振装置です。
大小の地震の周期に対応して振動を和らげてくれます。
3.繰り返しの余震による耐震性能の劣化
ここに大地震の記録があります。
熊本地震の地震回数の記録です。
熊本地震はいろいろな意味で今までの大地震の常識を超えてきました。
まずは震度7クラスの大地震が2016年の4月14日と16日の2回観測されています。
一般的に地震は本震といわれる大きめの揺れが起きて、その後それより小さい揺れや余震などが
続きだんだんと終息するのが普通ですが、熊本地震では本震といわれる震度7クラスの揺れが
短期間にほとんど同時に起きています。
そしてもう一つの大きな特徴は、その後、余震と言われる地震が4284回記録されています。
阪神淡路地震の余震が230回、新潟中越地震の余震が630回と言われてますので
その多さは特筆すべきだと思います。
余震はその一つ一つは小さいですが、繰り返し起これば家に少なからず損傷を与えることになります。
制振装置はその繰り返し発生する余震に対抗して家を守ります。
制振装置の重要性は何となくご理解いただけたでしょうか?
それでは、数ある制振装置の中でどんな制振装置が地震に対して有効なんでしょうか?
そしてナチュラルアスカの家が採用している制振装置についてもご説明しようと思います。
まずはおさらいです。
制振装置の働きは
1.家の揺れの吸収
2.共振の防止
3.繰り返しの余震による耐震性能の劣化
でした。
当然、制振装置を選ぶ場合これらの性能を備えているのは必須になります。
ただ、制振装置にはもう一つ備えてもらいたい性能があります。
地震が起こった時に家の壁の中で何が起こっているかを考えると、
その必要な性能が分かってきます。
この表は大地震が起きた時に地震の力の影響で壁の中がどのように破壊されていくか、
だんだん家全体が壊されていく過程を柱の傾きと共に表しています。
(左側の㎜ミリが壁の動きでradラジアンが壁の傾きの数値です。)
下から解説すると
1.地震で壁の中の柱が3㎜動き、1/1000rad傾くと
「あれ、地震?」と地震の揺れを感じます。
2.柱が15㎜(1㎝5㎜)動き、1/200rad傾くと壁材(プラスターボード)を柱に留めている釘が抜け始めます。
3.柱が25㎜(2㎝5㎜)動き、1/120rad傾くと耐震用の構造用合板を留めている釘が抜けたり折れたりして
構造用合板の力がだんだん弱くなります。
4.柱が33㎜(3㎝3㎜)動き、1/90rad傾くと壁の中の筋交いという壁を支えている木が折れたりして痛みます。
この時点でかなりの損傷です。
5.柱が100㎜(10㎝)動き、1/30rad傾くと家の倒壊の危険、又は倒壊が始まります。
この表から分かることは大地震が来た時、柱が15㎜(1㎝5㎜)動き1/200rad傾いた時には
壁の中で壁材を止めている釘が抜けだし崩壊が始まっているという事です。
言い換えれば、この時点で制振装置の性能が発揮されていなければ制振の効果が薄いとなってしまいます。
上の表は地震などにより家が傾いたときの家の変形と制振装置(制振ダンパー)の効果を表したものです。
この効果を「バイリニア特性」といって地震が発生したとほぼ同時に働き、家を地震の揺れから守ります。
ナチュラルアスカの家ではこの「バイリニア特性」のある株式会社プロジット社の「ウィンダンパー」を採用しています。
プロジット社のウィンダンパー施工例
この制振ダンパーは類似する他の制振ダンパーよりも性能が高く優秀な製品なのですが、
価格が高額なため一般的にオプション工事の部類になります。
しかしお施主様の将来の安心、安全の為にぜひ採用していただきたいので、
当社では半分の金額で取付費用も込みの施工をご提案しております。
例 広さが30坪の家の場合 30坪x13000円x1/2(半額)x税 = 214500円(税込)(現場取付費用込み)になります。